
個人型確定拠出年金(iDeCo)の運用方法は?メリット・デメリットと退職後の手続きを解説
確定拠出年金とは
確定拠出年金(通称iDeCo)は老後資金を支える年金の3階建て部分にあたる制度です。
年金制度については後ほど説明しますが、確定拠出年金は上手に利用することで効率的に老後資金を貯めることができる優れた制度です。
活用する人によっては普通に貯金をするよりも老後資金を100万円以上お得に貯めることができます。
しかし、やり方を間違ってしまうと損をしてしまう可能性もあるのでしっかりと知識をつけて取り組むことをおすすめします。
年金制度について
日本の年金制度は3階建ての制度となっています。どのような制度になっているか、一つずつ解説していきます。
年金制度の1階建て部分:国民年金
日本の年金の基礎部分に当たるものです。
加入する人は日本国内に住所のある自営業者・会社員・専業主婦等20歳以上の全国民が対象となっており、基本的には皆さん加入しなければならない制度ですね。
ちなみに20歳から60歳まで40年間満額で掛けた場合の受給額は現状では月額約64,000円となっています。
年金制度の2階建て部分:厚生年金・国民年金基金
一般の会社員が加入する厚生年金保険と自営業者が任意加入する国民年金基金についてです。
厚生年金は会社員として働いている人は必ず加入している年金制度です。
保険料は会社と従業員で折半で、満額で掛けた場合に受け取れる月額は現役時代の所得によって変化します。所得が高いほど高額な保険料を納めている為、老後に受け取ることのできる年金額も多くなるわけです。平均支給額は約150,000円(国民年金と合算)となっています。
国民年金基金は主に自営業者が国民年金に上乗せする形で加入するものです。掛け金は最高月額68,000円(確定拠出年金と合わせて)まで掛けることができます。
自営業者は会社員とは違い国民年金しかないので、老後資金が足らなくなるケースが多い為このように自分自身で年金を増やす必要があるわけですね。
ちなみに公務員の方は過去に共済年金というものがありましたが、現在これは厚生年金に統合されており一般の会社員と同じ形になっています。
年金制度の3階建て部分:企業年金・確定拠出年金
更なる老後資金の上乗せの為に用意されているのが企業年金と確定拠出年金です。
大企業や各業種の組合で企業年金が用意されている場合が多いのですが、現在はほとんどが確定拠出年金に移行されています。
2階建て部分までの年金は説明しましたが、サラリーマンの平均年金額は約15万円、自営業者で国民年金のみだと64,000円と老後生活するには非常に心もとない金額となっています。
ちなみに厚生労働省の発表している夫婦二人で老後生活するための最低必要資金は約28万円ですので、共働きでお互いに正社員として厚生年金を掛け続けた場合になんとか準備ができるくらいです。
そこで余裕のある老後生活をおくる為に用意されているのが確定拠出年金です。これは会社員・公務員・自営業者・専業主婦とほとんどの国民が加入できるようになっています。
個人型確定拠出年金(イデコ)のメリット
idecoの掛け金は全額所得控除
最大のメリットと言っても良い掛け金が全額所得控除になるというものです。
所得控除というのは例えば年収400万円の人が毎月1万円の確定拠出年金を掛けていたとしたら年間12万円が所得から控除されます。つまり400万円-12万円=388万円に課税されることになります。
年収400万円だと所得税・住民税合わせて30%の課税となるので12万円所得控除されると1年間で12万円×30%=36,000円も税金がお得になるわけですね。これを40年間続けたら144万円です。
ここで既に掛けている人と掛けていない人で100万円以上の差が生まれます。
個人型確定拠出年金の運用益は非課税
運用益が非課税になるのも大きなメリットです。
確定拠出年金は掛け金を何で運用するのか、自分で選択する訳ですが基本的に運用をするということはお金が増える可能性もあれば減る可能性もあるわけです。
減ってしまった場合は当然税金を掛けられる心配もないわけですが、増えた場合には本来であれば税金を払わなければなりません。通常の税率であれば金融商品で運用益が発生した場合には20.315%の税金を払わなければなりませんが、確定拠出年金で得た利益は全て非課税で受け取ることができます。
確定拠出年金の受け取り時も控除が受けられる
- 年金形式として5年以上20年以内で受け取る。
- 一時金として一括で受け取る。
確定拠出年金はこの2つの受け取り方を選択できますが、それぞれでメリットはあります。
年金形式であれば雑所得としての控除が活用でき65歳以上の場合、公的年金(国民年金や厚生年金)との合計金額が120万円以内であれば非課税となります。
ただ、通常の勤めをされた方であれば厚生年金が120万円以下ということはなかなか無いでしょうから基本的には課税されるものと思っておいた方が良いでしょう。
一時金として受け取る場合には退職所得控除が適用となります。
例えば、35年勤めた場合では、800万円+70万円×(35年-20年)=1,850万円までは非課税として受け取ることができます。
個人型確定拠出年金(iDeCo)のデメリット
イデコは60歳まで引き出し不可能
最大のデメリットは60歳までは引き出しが不可能ということです。
老後の資金を貯めることを前提として掛けるものですから当然のようにも思えますが、自分自身のお金が自分の意志で全く解約できなくなってしまうというのはかなり大きなデメリットです。
仮に何か病気や事故といった突発的にお金が必要となった際に、手元の貯蓄では対応できない場合で確定拠出年金にお金が貯まっていたとしても解約はできないわけです。
口座管理手数料が掛かる
この口座管理手数料というのは金融機関によって月額が違うのですがだいたい200~600円です。
中には口座管理手数料が無料と書いてある金融機関を目にすると思いますが、厳密には申込先の金融機関に支払う口座管理手数料が無料というだけで国民年金基金連合会と信託銀行に支払う手数料は必ずかかりますのでご注意下さい。
この口座管理手数料は上記で説明した所得控除にて還付される税金でチャラにできるので一見デメリットに思えないように見えますが、注意しなければならないのは掛け金を掛けていない場合でも発生するという点です。
仮に確定拠出年金を始めたのは良いものの、途中で掛けることが苦しくなり掛け金をストップしたとします。すると所得控除によるメリットは無くなってしまいます。
しかし、口座管理手数料は発生するのでただひたすらに手数料だけを払い続けることになってしまう訳ですね。こうなったらただの金食い虫になってしまいます。
以上のデメリットからわかるように確定拠出年金を始める際には、必ず掛け続けられる無理のない金額で始めること、そして掛けたお金が60歳までは引き出し出来なくても大丈夫というくらい手元に予備資金を作ったうえで検討する必要があります。
確定拠出年金の運用
最後に確定拠出年金を始める際に選ばなければならない運用先について、少し触れたいと思います。
- 国内外の株式
- 国内外の債券
- 国内外の不動産投資信託
- 定期預金
運用先は主にこの4種類(金融機関によって異なる)に大別できます。
定期預金は確実に選んではいけない
所得控除を受けた上で元本割れのしない貯蓄ができるという話で定期預金を勧めるケースが多いですが、過去の経済の流れと今後の経済政策を考えたら今後日本がインフレの道を辿るのは明らかと言えるでしょう。
インフレとはモノの値段が上昇することで、例えば今400円で飲める喫茶店の珈琲が40年後には600円や800円になっていることです。皆さんが子供の頃を思い出してみると今より安く買えていたものは山ほどあるはずです。
- 自販機の値段は100円だった。
- 牛丼は1杯290円だった。
- ディズニーランドの入場券は5,500円(TDS開園時)だった。
- ヤングドーナツは30円だった。
挙げたらキリがありません。
このように時代が進むと物価が上がっていくことは過去が証明している訳です。そこにわざわざほとんどお金の増える見込みのない定期預金にお金を預けることは、将来物価に負けることを意味しているので非常に危険と言えるでしょう。
加入時期によりリスクの高い運用先の比率を考える。
- 海外不動産投資信託
- 国内不動産投資信託
- 海外株式
- 国内株式
- 海外債権
- 国内債券
- 定期預金
確定拠出年金の運用先をリスクの高い順番で並べると、このようになります(1が最も高い、6が最も低い)。
基本的には定期預金以外のものをバランスよく均等に組み合わせることが一番無難な選択と言えますが、若い時期から確定拠出年金を始めるのであれば多少リスクの高いものの比率を高めておいても良いかもしれません。
運用先はスイッチングと言って途中で変更可能ですから、受取時期が近づいてきたら安定的なものに順次切り替えていけば良いでしょう。
個人型確定拠出年金のおすすめは運用コストの安いもの
不動産・株式・債券の中でも様々な運用先がありますが、とにかく運用コストの安いものを選ぶのが重要です。信託報酬という部分の%をチェックしそれぞれの運用先で一番安物を選びましょう。
いくら、運用益を出していても手数料で持っていかれては意味が無いですからね。
- アクティブ型
- パッシブ型
この2種類の運用があります。
アクティブ型の方が運用パフォーマンスにおいては高いものが多いですが、基本的にはパッシブ型の方が運用コストは安いのでこちらを選ぶことをオススメです。
確定拠出年金まとめ
うまく活用することができれば老後資産の形成においては非常にメリットの大きい制度ですが、デメリットや運用方法をしっかり学んだ上で取り組まなければせっかくのメリットを生かすことができず、むしろデメリットばかりを被ってしまう可能性のあるものです。
また、どこの金融機関で申し込むかによっても手数料や準備されている運用先が違うのでしっかりとリサーチをした上で申込みをしましょう。